矮  惑  星
わ い わ く せ い ・  d w a r f   p l a n et

2006年8月24日、チェコのプラハで開催された国際天文学連合(IAU)の総会で、太陽系の惑星に関する新しい定義が採択された。その結果、1930年以来太陽系の第9惑星とされていた冥王星が、惑星としての資格を剥奪され、新たに設定された惑星ではない矮惑星として認定された。このほか、冥王星より大きいエッジワース・カイパーベルト天体(EKOB)のエリスや小惑星ケレスが矮惑星として認められた。 20世紀の後半から長足の進歩を遂げた観測技術により、海王星以遠の領域で直径1000km以上のEKOBが発見されていることから、このジャンルの天体は将来増えることが予想される。IAUは、既に10個以上の候補のリストアップを終えたと伝えられている。  

矮惑星として認められる条件は、
  • 太陽をめぐる軌道上を周回している。
  • それ自身の形状が、固体をその形に維持するための力によるのではなく重力によって静水圧平衡形状(ほぼ球状)を保つに足る質量がある。
  • その軌道の近くに他の天体が存在している(他の天体を掃き散らしていない)。
  • それ自体が衛星ではない。




●冥王星
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 2006年8月24日の国際天文学連合の総会で、冥王星は1930年以来維持してきた惑星の座を失い、惑星でない矮惑星に位置づけられた。冥王星は、新たに海王星以遠の天体の重要な典型例(an important prototype of trans-Neptunian Object)に認定され、今後発見される巨大氷天体のリーダーとしての地位を与えられた。太陽からの平均距離は約59億kmと非常に遠いため、冥王星から見ると太陽は小さな点に過ぎない。

 冥王星発見のきっかけは、海王星が発見された時その質量は、天王星を予想の軌道からそらせるには十分でないことが分かり、天文学者による9番目の惑星Xの探索が始められた。特にアメリカの天文学者パーシバル・ローエル(1855〜1916)は熱心であった。しかし、新しい惑星を発見できないままこの世を去り、彼の夢は友人に引き継がれた。1930年2月30日、その友人が採用したクライド・トンボー(1906〜1996)が発見し、プルート(冥王星)と命名した。

 冥王星の軌道は黄道面に対して17度と大きく傾斜していて離心率(楕円軌道の程度)はどの惑星よりも大きい。近日点は44億4220km、遠日点が73億8810kmと非常に細長い楕円軌道になっている。従って、太陽を一周するのに248年もかかる。この間、冥王星は近日点の領域を移動する20年間は海王星の軌道の内側に入るため、冥王星と海王星の太陽からの距離は逆転する。1979〜1999年がその期間にあたった。

 1978年、衛星カロンが発見されると冥王星の直径が2274kmに訂正された。質量は地球の1/500とされているが、これは、衛星カロンが冥王星の周りをまわるときに起こる食(カーロンが冥王星を隠す現象)の解析により求められたものである。表面温度は−230〜210℃でメタンの氷で出来た極冠が存在するかもしれない。平均密度は水の2.21倍であることから、冥王星は、木星や土星の氷衛星に近いと考えられてれていた。



エリス (旧名称2003UB313・ゼナ)

2003年10月21日、米カリフォルニア州パロマー天文台の口径1.8mの望遠鏡による観測で、巨大な氷の天体(エッジワース・カイパーベルト天体:EKBO)が発見され、2003UB313の暫定名がつけられた。その後2006年9月13日、国際天文学連合(IAU)の下部組織である惑星システム命名ワーキンググループ(WGPSN)と小天体命名委員会(CSBN)において、矮惑星(dwarf planet)「(136199) 2003 UB313」とその衛星の名前がほぼ満場一致で決定された。2003 UB313は「Eris(エリス)」、衛星は「Dysnomia(ディスノミア)」である。

天文学者クライド・トンボー(1906−1997)が冥王星を発見して以来、最大の天体である。最初の観測で、直径が冥王星の約1.5倍あると推定されたが、地球から約100億kmとあまりにも遠く離れていたため、軌道や形状などの詳細を把握できなかった。

2004年1月8日、発見者のマイク・ブラウン博士(カリフォルニア工科大学)を中心とするチームは、は再度このEKBOを詳細に観測した。その結果、直径は最大3094km、最小でも2859kmであろうと推定した。更に2005年12月9日及び10日、同チームはハッブル宇宙望遠鏡による観測で、エリスの直径は2384kmで、冥王星(直径2272km)より大きいことを明らかにした。エリス3は、近日点が54億km、遠日点が146億km、そして公転周期は560年であることも分かった。国際天文学連合(IAU)に観測チームにより10番目の惑星として申請された。エリスには直径約250kmの衛星(ディスノミア)があることがその後の観測で分かった。ディスノミアは、約2週間の周期の周囲を回っている。衛星を持つEKBOには、直径が1575kmの2003EL61がある。

エッジワース・カイパーベルト天体

 1992年、太陽から約61億5000万〜72億km離れた軌道を公転している直径約250kmの氷の天体が発見された。1992QB1と命名されたこの天体は、その存在を予測していた天文学者のエッジワースとカイパーベルトにちなんで、エッジワース・カイパーベルト天体と命名された(略してカイパーベルト天体とも呼ばれる)。以後、海王星の軌道(太陽から約45億km)から約75億km以内の領域で同じような天体が次々に発見され、これまでに約800個のこの種の天体が発見されている。

カイパーベルト天体(EKBO)は、太陽から遠く離れている上に暗いため観測が非常に困難であったが、観測技術の向上やCCDカメラの使用により今後発見される数が増えると予測されている。特に2000年以後は、クワオア、2002AW及び2003DWのように直径が1000kmを超える巨大EKBOが発見されるようになった。2004年3月には、直径約1700kmの2003VB12(後にセドナと命名)が発見された。2003VB12は、近日点(太陽に最も近い位置)が114億km 遠日点は1300億kmの超楕円形の軌道を公転しており、公転周期は1万500年という途方もなく長い。ちなみに、冥王星の公転周期は248年である。

そして遂に、冥王星(直径約2250km)より大きいEKBOが確認された。エリスである。2003年10月21日、カリフォルニア工科大学のマイク・ブラウン博士を中心とするチームは、カリフォルニア州のパロマー天文台の口径1.8mの望遠鏡による観測で、直径が冥王星の約1.5倍あると思われる天体を発見した。しかしこの時点では、この天体は地球から遠く離れすぎていて詳細を把握できなかった。そのため、2004年1月8日に追観測を行い、エリスの直径は最大で3094km 、最小でも2859kmであることが分かった。

1930年、米国の天文学者クライド・トンボーが発見した冥王星以来最大の天体である




●ケレス


1801年1月1日、イタリアの天文学者G・ピアッツイ(1746−1826)により発見された最初の小惑星である。形状はほぼ球形で直径は920km、太陽から2.27AUの距離にある小惑星帯の中で公転する最大の小惑星で、小惑星帯に存在する物体の4分の1を占めている。

ケレスは、炭素の豊富な粘土質の岩石(C型小惑星)で暗く、アルベド(太陽光の反射率)はわずか9%に過ぎない。ケレスの自転周期は約9時間である。





名称 分類 直径 / km 質量 / kg 軌道傾斜角 / ° 軌道離心率 軌道長半径 / AU (1) 公転周期 / 年 自転周期 / 日 衛星数
ケレス 小惑星 975×909 9.5 × 1020 10.581 0.080 2.767 4.60 0.377 0


矮惑星に分類される可能性のある天体

名称 分類 直径 / km 質量 / kg
2005 FY9 キュビワノ族 1600〜2000? (不明)
オルクス 冥王星族 840〜1880 6.2〜7.0 × 1020
セドナ 散乱ディスク天体 1180〜1800 1.7〜6.1 × 1021
2003 EL61 キュビワノ族 〜1500 〜4.2 × 1021
クワオアー キュビワノ族 989〜1346? 1.0〜2.6 × 1021
カロン 冥王星族 1207±3 1.52 × 1021
2002 TC302 散乱ディスク天体 <1200 (不明)
ヴァルナ キュビワノ族 〜936 〜5.9 × 1020
2002 UX25 キュビワノ族 〜910 〜7.9 × 1020
2002 TX300 キュビワノ族 <900 (不明)
イクシオン 冥王星族 <822 (不明)
2002 AW197 キュビワノ族 700±50 (不明)
カオス キュビワノ族 〜560 (不明)
1996 TO66 キュビワノ族 (不明) (不明)






















太陽 水星 金星 地球 火星 木星 土星 海王星




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